JR東海 特急ひだ36号

先ほどの濃飛バスの高速バスで新宿から高山へ。そして時間まで高山市内を走る濃飛バスの市内路線をいくつか体験し、再び高山駅へ。これから乗る列車も「初めて」になります。

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改札付近に団体さんが居たのですが、どうやら特急に乗る模様・・・その団体の動きから、どうやらこれから乗る「ひだ36号」が入線しているようだと察知し、慌てて夕食用の駅弁を確保。

ホームに出ると銀色の気動車が停まっていました。これが名古屋行き特急「ひだ16号」と大阪行き「ひだ36号」のようです。

まず面食らったのは車両の形式表記。ガラガラ言っているので気動車なのは頭で判っているのですが表記は「クモハ85-101」・・・どうみても「電車」表記です。基本的に気動車なのですが、駆動はあくまでもモーターでエンジンを回して発電し加速や抑速に使っているためこのような表記になっているとか。ハイブリッド車ということで通称としては「HC85」と呼ばれています。

指定された4号車は4列のシートが整然と並んでいて、まだ新車独特の匂いが残っています。座席肘置きにコンセントがついていて、まるで新幹線のようです。同社のコンセプトとしては「気動車だけど新幹線のクオリティを」といったところでしょうか。

先ほどの団体はどうやら名古屋編成に乗った模様。僕の乗った号車は高山を満喫したであろう、大きなリュックサックを荷棚に乗せた外国人観光客4人連れはじめ、いずれも高山観光を終えて帰路につくといった感じの方が数人で閑散としたものでした。まさかここに新宿から来た人間(僕)が乗り合わせていようとは、そしてそれが「乗り物目的」であろうとは・・・思いもしてないでしょう(笑)

15時34分、定刻に発車。すぐに電子オルゴールが流れてきましたが、まさかの「アルプスの牧場」の現代アレンジだったとは・・・かつて、高山線を走っていた国鉄キハ80の「ひだ号」でも流れてたであろう可憐な音階のオルゴールが、令和の最新型車両でもアレンジされて聞けるとは・・・同社もなかなか粋な事をしてくれます。

飛騨一之宮を過ぎるあたりで大きな雨粒が窓を叩いて・・・・あぶなかった、もう少し後の便にしようかと思ってたので間一髪です。

飛騨川を見ながらうねるように走り・・・確かにモーターらしき駆動音だけで極めて静かな車内ですが、時おり「バシューン」というエアを開放するような音が一定間隔をもって聞こえてくるのが特徴的で、たぶんハイブリッドゆえに必要な機構が組まれているのでしょう。

高山線内の停車駅は、下呂と美濃太田だけという「速達便」にも似た豪快なダイヤになっており、高山で観光を済ませた客をできるだけ早く名古屋と大阪へ帰そうという、直行性を意識したダイヤ構成にしているのでしょうか・・・

久々野・渚と過ぎ、飛騨小坂を出たあたりで直線区間があったようで、気動車らしかぬ加速を見せて最新鋭車であることを見せつけているかのようでした。

何回目かの飛騨川を渡って、16時17分に最初の停車駅・下呂に到着。自由席に少し列があった以外はパラパラと指定席に乗ってくる、といった感じで僕の乗っている号車も数人が乗ってきました。

かつては貨物扱いがあった少ケ野信号場で運転停車。ちょっと遅れ気味の下り「ひだ号」が遠慮気味に通過・・・最新型になってもこういう行き違いの停車は避けられず、到達時間の短縮に障害になってるのは変わりなさそうで・・・

キハ80からキハ85へ、そしてHC85になったのを見るとあくまでも速達性よりは快適性、を意識したもので、求道的に早く往復したいのであれば東海北陸道をかっ飛ばせばよい訳でして・・・(もっとも高山線に負けないくらいの険しい所を走ることになりますが)それに「ひだ号」の利用者層はこの「36号」でも見られる観光利用が大半で、あとは飛騨地区内の用務が便利であればそれ以上のものは望んでなさそうなフシが見受けられます。こういう「割り切り」も単線鉄道だからこそ可能な方策、なのかもしれません。

飛騨金山、白川口といった南飛騨の観光の拠点をいつしか過ぎ下麻生を過ぎると、もう飛騨の山々は遠くへ離れて列車は美濃平野へ。

17時21分、美濃太田着。乗降ともにほとんど無く、すぐに発車。坂祝のヤード跡がいい具合に草蒸しているなと思ったら、次の瞬間から木曽川の日本ライン沿いに身をくねらせながら走っており、再び直線区間が続く鵜沼付近から加速しそのまま岐阜まで一直線に・・・途中ですれ違う列車の多さと

「・・・次の岐阜で名古屋行きと大阪行きを切り離すため、これより準備作業に入ります。行き来が出来なくなります事、ご注意願います」

こういう案内が流れるあたりに岐阜都市圏が近づいていることを実感します。

40分、県都・岐阜着。案内通りにホームの作業服の駅員さん(操車係)が乗り込み、ドアを閉めたり器具を弄って切り離し作業の最終段階に取り掛かられていました。車掌さんも名古屋行きに乗り換えられ、大阪行きにはここから乗務される車掌さんが新たに乗り込まれてきました。

一旦ドアが閉まり、神戸方へ少し動いて再開扉し切り離し完了。少ケ野の遅れを微妙に引きずっており、大阪行きが発車する時間にまず名古屋行きが発車。そして残った大阪行き編成がおもむろにホームを離れました。

「・・・岐阜から乗務員交替しました。途中の米原までご案内いたします・・・」

案内が終わるやいなや、巡回に回られていました。地元のJR西日本もマメに車内巡回される方がいますが、JR東海の方ははその倍以上は巡回されている、といった印象を受けます。

大垣を出て、東海道本線下り線(南荒尾信号場~関ヶ原)を走行中に高山駅で調達した駅弁で夕食。やっぱり飛騨牛関連の総菜弁当は旨いですね・・・そしてこの列車乗車をもって、ひっそりと東海道本線の旅客線の全線踏破達成。

18時23分、米原着。再び乗務員交替があって、発車後JR西日本の車掌さんが巡回に来られました。

ところでこの車両はJR東海の所有であることから、客室ドア上の液晶表示には自社管内の遅れ情報が流れていましたが、米原を過ぎて他社管内に入ったらどういう表示になるのだろうと観察していましたが・・・特に変わることなく、相変わらず名古屋近郊の遅れ情報を流していました。アーバン内の情報が流れれば便利ですが、あくまでJR東海のサービスという事なのでしょう。

能登川付近は閉塞の加減なのかノロノロ運転でしたが、近江八幡を過ぎると再び加速。高山線と違い平地ばかりの東海道線内は、電車かと見まがうほど鋭い加速をします。

19時、草津着。特急なのに草津停車とは・・・とは思いましたが、「ひだ36号」がかつての急行「たかやま」の進化形であることを考えると、ごく自然な停車駅設定かなと思いました。そしてここから僕の号車(指定席)に利用者が居た事に驚き・・・

複々線に入り、内側線の通勤列車と抜きつ抜かれつを繰り返し、19時17分に京都着。ここで外国人4人組は下車していきました。高山を満喫した後は古都・京都を満喫・・・や、日本を楽しんでおられるようで何よりです。

そしてここからも乗車がありましたが、どうやら自由席のきっぷだったらしく着席してまもなく、指定席表示を見たせいか慌ただしく別の車両へ移っていきました。

高槻を過ぎて摂津富田あたりから猛然と加速をはじめ、内側線のC電(各駅停車)やT電(快速)をごぼう抜きに・・・それでいて無理な感じはなく、やはりハイブリッド車のスマートさが目立ちます。

新大阪でパラパラと客が降りていき、終点の大阪には51分着。ほぼ定刻に近づけて走ってた事にちょっと驚きました。

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JRの複数社跨りの列車はここ数年で激減し、この「大阪ひだ」もいつ廃止になるか・・・と、毎年ダイヤ改正ごとにやきもきしていましたが、最新鋭のHC85が投入されてJR2社から「育てる」というメッセージを見たような気がしたので、しばらくは安泰かな、と思っています。

【令和5年7月28日乗車】

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