濃飛乗合自動車 中央高速バス

中央自動車道を走る昼行高速バスに乗るのが初めてならば、濃飛乗合自動車(濃飛バス)の高速バスに乗るのもこれが初めて、となります。

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乗車まで1時間以上の余裕を持って始発のバスタ新宿に来たものですから、時間が余って仕方なかったので入口のところで「撮影」に勤しむことに。ですが、各方面からの夜行バスや京王バスの高速車は続々とやってくるものの、これから乗る濃飛バスがやってくる気配がなく訝しつつ、時間が近づいてきたため撮影を切り上げ、バス停へ。

6時半という早い時間にも関わらず、ごった返す待合室を抜け乗り場へ行くと既に待機場に濃飛バスは停まってました。僕が出口で張るよりもずっと早くここで待機していたのかもしれません。

発車7分ほど前になると待機場を出て、ぐるっと周回したのち乗り場へ横付けされました。サイドには新穂高の山々と観光案内らしいキャッチが書かれていて、すでに飛騨高山に居るような気分になります。

後部トイレの4列シート車で、20人ほどが乗りこんできたでしょうか。乗務員さんも手慣れた感じでシートにチェックを入れていきます。

7時5分を若干過ぎたところで発車。新宿駅を見ながら西へ進み、中央高速バスでは「お馴染み」感のある首都高初台ランプからいよいよ高速へ。やや混み気味ながらも流すような感じで合流。高井戸を過ぎ中央道へ入ると程なく最初の停留所・中央道三鷹に到着。何人かの客がこちらを見ていましたが、乗ってくる客は居らずそのまま発車。

国立府中まで来るとあまり高い建物も見られなくなり、いよいよ郊外に出たことを実感します。深大寺、府中、日野と各停留所へ進むものの乗車は悉く無く、8時ちょっと前に着いた最後の乗車地である中央道八王子も乗車はなく、新宿発車時の人員で確定しました。乗務員さんが発車前にカウンター片手にチェックを入念に行い、そして発車。

「・・・途中、中央道の釈迦堂PAと諏訪湖PA、そしてバス停ですが平湯ターミナルでも小休憩をお取りします。今日は行楽利用の車が多く到着時刻に多少の遅れが発生すると思われます・・・」

乗務員さんからこんな案内があり、言葉は悪いのですが「コロナ解禁」を実感する案内でもありました(もっとも手洗い、うがい、人混みでのマスク着用は基本ですよ)

実際、八王子JCTを過ぎたあたりでも行楽のマイカーの列が車線変更でマゴついたり、妙なところでブレーキが踏まれたりとするので、乗務員さんの苦労も絶えなさそうです。そして車内も利用者同士のおしゃべりの声が後ろから絶え間なく響いており、路線バスというよりは観光バスに乗り合わせたような気分になります(笑)

コロナが猛威を振るってた頃は、朝の京都~名古屋のような行楽色の強そうな線でも客は皆おし黙ってただけに、こうも変わるものかとちょっと驚きます。

相模湖付近で居眠りしてしまい、気が付いたら最初の休憩地である釈迦堂PAにまさに到着せん、といった感じでした。

PA内も行楽色に染まっており、老若男女が絶えることなく売店やトイレを闊歩していました。大型の駐車スペースも物流のトラックに交じって観光バスが何台か停まっており、本格的な観光シーズンに突入したんだなと実感。

釈迦堂PAを出て甲府盆地へ降り、それを抜けたあたりでようやく周りの車もいい車間距離で走る様になり、外の暑さとは対照的にすこぶる快適な走行環境に・・・

双葉SAを過ぎ八ヶ岳を望むあたりで、前方を走っていた飯田行き京王バスをサクッと追い抜き。向こうもこちらに負けぬ長距離ぶりで、終点の飯田までは4時間近くかかる系統です。ご苦労様・・・と思ったらもう1台、京王バスが走っていたのでこちらも追い抜き。続行便の様子からも多客期に入ったことを実感します。

富士見手前で長野県入りし、諏訪湖を見ながら10時を過ぎたあたりで2回目の休憩地・諏訪湖SAに到着。

降りてこのブログ用の写真を何枚か撮りましたが、いや暑いのなんの・・・発車まで時間があったので売店に逃げ込み涼を取ってました(笑)

岡谷・塩尻と過ぎ、次第に山が遠ざかって松塩エリアの盆地に入ったことを実感。右手に松本の市街地を見つつ松本インターへ。高速を降り、いよいよ一般道(国道158号)に入りました。

最初は松本電鉄、いや今はアルピコ交通の鉄道線と言うのでしょうか。ひょろっとした線路と架線柱が国道に並行して走っており、地方部のそれなりに開けた郊外を走っているような感じでしたが、国道自体は上下1車線ずつの対面通行で、大きなトラックや観光バスがやってくると緩くブレーキをかけ離隔距離を取って防衛運転。そこへもって地元の車と県外ナンバーの車が様々な速度で走っているので、高速同様に乗務員さんの気苦労は続いています・・・

鉄道線の終点と、上高地へ向かうバスの車庫のある新島々を過ぎたあたりで、

「・・・高速を降りまして一般道を走っています。これよりカーブと急減速が予想される地域を走ります。今一度、荷棚やお座席の荷物が転落しないようご確認願います・・・」

という案内が乗務員さんからあって、国道158号の狭隘区間に突入することを暗に告知されたようで妙にテンションが上がります(笑)

信濃川の上流部にあたる梓川(あずさがわ)が車窓の友になりますが、国道158号はその川岸の地形を忠実にトレースしている関係上、90度コーナーは勿論の事、大型車がすれ違うのも憚るくらいの狭いトンネルが連続します。

乗務員さんもトンネル前では十分減速し、トンネルの中を見通して確証が得れたらゆっくりと通過する・・・そんな感じで慎重に歩みを進めていきます。

それでも、と言いますか県外ドライバーが不用意にコーナーから飛び出しそうになったり、すれ違いのトラックを躱す意味でトンネルの壁ギリギリまで幅寄せするため強めのブレーキングが続き、客の立場でも結構神経をすり減らすシーンが続きます。僕自身もここは乗用車で何回か走り抜けていますが、まあジェットコースターかと思うくらい振り回されます。

奈川渡手前では、とうとう乗務員さんも不意に出てくる車に業を煮やしたのか、トンネルに入る前に数回のパッシングを点滅させ自車の存在を最大限にアピールされていました。

「秘湯」と言われている坂巻温泉を過ぎ、上高地へ向かう道が分かれる中の湯交差点を左折しさらに登坂。ようやく長野と岐阜を繋いだ安房トンネルが見えてきました。

「・・・急ブレーキ、急ハンドル、誠に失礼いたました。狭い区間はこれで終わりです。このトンネルを出ますと平湯温泉に到着致します。お疲れさまでした・・・」

・・・や、お疲れ様なのは乗務員さんですよ。事故もなく快適に過ごさせてもらって恐縮です。

長いトンネルを抜けて視界が開けるとそこは岐阜県で、植わっている樹木も針葉樹ぽくてそれまでの長野県の森とはまた様相が違います。

12時ちょっと前に平湯温泉もよりの平湯BTに到着。ここで数人が降りてついでに10分ほどの休憩となりました。

ここも乗用車で立ち寄ったことはありますが、バスの客として立ち寄ったのは初めてでなんとなく新鮮な感じがします。休憩中も自社のバスや長野側のアルピコ交通のハイデッカー車がやってきたりと如何にも「交通の要衝」といった雰囲気があります。

乗務員さんも落ち着いたようで、

「お疲れ様です。今お乗りのお客様の降車地は高山ですが、途中の丹生川に変更なされる方はお知らせ下さい。それでは発車します」

こんな感じで案内され、ほどなく発車。

平湯と丹生川を分ける峰を越えて、ゆるゆると坂を下り気が付くと長閑な田園地帯の中を走っていました。スマホで現在地を確認するも丹生川ってところがまだである事以外、何処を走っているのか皆目見当が・・・(汗

「まもなく丹生川です。お知らせがありませんので通過します・・・」

いつのまにか丹生川の中心地を走っていたようです(笑)

そこからも似たような田園風景が続き、やや家が増えたかなってところでいきなり町が始まって気づいたら高山の街中を走っていました。

市内バスとすれ違えばなんとなく判るのですが、それもないのでいきなり着いたって感じが強いです。

終点の高山濃飛バスセンターにはほぼ定刻に到着。バゲッジルームからのトランクの多さに、これまた観光都市高山の人気の高さを見たような気がします。

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初事業者、初路線、初狭隘区間走行と今回は「初めて」づくしの乗りバス旅になりましたが、山岳区間を持つ濃飛バスの乗務員さんの「技」を間近で堪能できたような気がして、何だかトクした気分になりました。

【令和5年7月28日乗車】

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