JR西日本 特急サンダーバード9号

令和6年3月16日、北陸新幹線がそれまで終点だった金沢から大きく南下し、敦賀まで延伸開業しました。

それに伴い、金沢で新幹線から連絡を受けて大阪まで走っていた特急「サンダーバード」が、当然というか敦賀まで短縮されました。

大阪~敦賀間、1時間23分。特急列車としては短い運行時間になりましたが、列車としての雰囲気はどう変わったのか、乗ってきました。

* * * *

売店に立ち寄ったりして乗車予定の「サンダーバード9号」の出る11番ホームに着いたのは入線数分前。すでに利用者と見られる団体客や、海外からの老若男女がチラホラとホームのあちこちで思い思いに過ごしていました。

空前の円安で日本観光もかなり気軽に行けるようになったようで、このごろよく見かける光景になったような気がします。

やってきたのは683系の12両編成。

コロナ禍の頃は基本編成の9両でももったいなかったくらい利用者が少なかったものですが、今日はドアが開くや否やなだれ込むように乗り込んで、発車するころには半分以上の席が埋まったような感じです。

海外利用者 ― それも語感を聴くにスペイン人の団体のようで車両の前の方に固まっていました。ビシッとした格好ではなく何処となくダルダルとした感じで、カジュアルさもまた日本人とは違うようです。
定刻の8時40分、大阪を発車。自動放送のくだりで、

「停車駅は新大阪、京都です」

と極めて簡素に終わった事に、運行区間が短縮されたことを実感します。

(便によっては、高槻や近江今津にも止まるものもあり)
淀川を渡って新大阪。発車後に巡回していた車掌さんが、僕の前の客に向かって何か案内しているな・・・と思ったらグリーン利用なのに普通指定に座っていた模様。どうやら敦賀で乗り継ぐ新幹線の号車と間違えた模様。

新幹線との「遠し」の指定券だと、発券の仕方で1枚に収まる指定券もあるためで、利用者側はしばらくの間こういう「ミス」に注意しなきゃいけないような気がします。
新大阪を出るくらいまでは仲間とワイワイと話が弾んでいたスペイン人団体も、ほどなく静かに・・・なったと思ったら、今度は車両後ろの日本人団体が結構にぎやかになっており、団体旅行のテンションのピークが千差万別なことに驚きつつも、コロナ禍の押し黙ったあの雰囲気が信じられなかった時と比べ、感慨深いものを感じたり・・・

気づいたら山崎を過ぎており、新快速の速さや廉価さが喧伝されてる中にあってもやはりというか、有料列車の京阪間の速さはやはり「特急」の独壇場と言えましょう。9時7分、京都着。

1分停車の間にこれまたドヤドヤと乗り込んできて、空いてる席は片手で少し余る程度に・・・
山科から湖西線へ。長等トンネルを抜けて、大津京を過ぎたあたりから見える茫洋とした湖 ― 琵琶湖を眼下に快走します。永らく見てきたこの風景、変な話ですが・・・今乗ってる列車が金沢や富山へ行ってた頃に見た琵琶湖は

あーまだまだだなー」

って諦観すら感じるポイントだったが、今回の敦賀短縮で

ここ終わったら終点だからしっかり見ておこう」

という決心ポイントになった気がします。

志賀あたりの琵琶湖の景色に、前方にいたスペインの団体さん数人が立ち見し始め、記念撮影まで・・・いっぽう日本人はみな一様にスマホや居眠りばかり。や、だからといって日本人を批判するつもりは無いのですが、日本人が海外の名勝地に行ってこんな感じにスタンディングオベーション(立ち見で賞賛)を果たしてするのだろうか・・・彼らのはしゃぎっぷりに、正直「羨ましさ」を覚えました。

近江今津を過ぎて京阪神の「延長」みたいな雰囲気は車窓から消え、徐々に北陸に踏み込んで行き、

52分、湖西線の終点・近江塩津を通過。ここからは北陸本線に入りますが、それも数キロ先の終点の敦賀まで。485系の特急に乗って、この駅を過ぎると「これから北陸路か」と普段見ない風景に目的地までずっと心躍らせたものですが、それも遠い昔の「思い出」になってしまいました。

新疋田を過ぎ、並走していた国道8号線が離れると車窓も開け敦賀の街に入ったことを実感しますが、

今までは、敦賀の車庫を右手に見ながら駅へ入っていったものですが、この新幹線開通後は特急列車のみ新幹線の高架下へ入るアプローチを取る関係からか、こうして高い所から左下に車庫を見る格好で駅へ進入することになったようで、これはなかなか新鮮なビジュアルではないでしょうか。

新幹線の高架下をしずしずと走り、

10時3分、終点の敦賀に到着。新幹線駅の直下に作られた特急専用のホームで、真新しいホームの踏面が気持ちいいです。

「サンダーバード9号」を降りた利用者が、コンコースへ向かうエスカレーターに乗る列を作っていましたが、果たして彼らが在来線から新幹線への乗換時間である「8~12分」でたどり着けるのか・・・ちょっと心もとない気がします。

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同区間には、敦賀延伸前より料金不要の新快速(運賃のみで利用可)が走っていることもあって、特急不要論がネット上でぶち上げられていましたが優等列車は単に「速さ」だけでなく、次に乗る交通機関への接続の「保証」というものも課せられた使命なんだな、と今回の乗車で再認識させられました。

それだけに、敦賀駅での乗り換え時間の議論はもっとなされるべきものであるし、ぶっちゃっけ今すぐ北陸新幹線が新大阪まで延伸されれば、そもそもこういう議論すら不要であるはずですが「大人の事情」で敦賀止まりである北陸新幹線の現況を鑑みると、短距離走者になった「サンダーバード号」の活躍は今しばらく続きそうな気がします。

【令和6年4月20日乗車】

サンダーバード号 過去乗車分

  

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