西日本鉄道 ペガサス号

「吉備エクスプレス」で岡山入りを果たした理由の大半は、この路線に乗るためにありました。

岡山~福岡間夜行高速バス「ペガサス号」。運行しているのは両備バス、下津井電鉄、西日本鉄道の三社ですが、この6月30日をもって西鉄担当便が運休されるという情報を目にして、急遽乗る事にしました。

* * * *

大阪からの「吉備エクスプレス」を降りて、岡電バス「初乗車」を兼ねて市内を適当に回ったり、遅めの夕食を摂ったりして時間を潰し、再び岡山駅西口へ。

「はかた号」でお馴染みになった夜行デザインのエアロクィーンが横付けされたのが、発車5分前。随分慌ただしいとは思ったのですが、ここからの乗車は僕を含め4名・・・5分前でも改札を済ませ、充分に出発準備が出来そうです。

22時、発車。

車内は独立3列シートが並び、荷棚からは仕切りカーテンが垂れ下がっており西鉄担当便に乗ったことを実感します。もっとも、このカーテンが使われる事はありませんでしたが・・・

岡山駅を出て数分で乗務員さんから車内案内があって

「倉敷出発後に改めてご案内します」

との事。

山陽新幹線の高架下を走るあたりは以前乗ったこの時もそうで、流すように走って気が付いたら中庄の川崎医療福祉大の病院付近まで来ていました。

倉敷インターからの国道が合流し、信号によくひっかかるようになったなと思ったら33分、倉敷駅に到着。

ここからは2名の乗車を受け40分に発車。構内には何台かのバスが止まってましたが明日の便向けなのか、人気は無くひっそりと停まっている感がまた「非日常感」があるというか・・・夜行バスの車内からだとなお一層強く感じます。

再び案内があって、

「・・・このあと20~30分ほどの山陽道、道口PAで休憩を取り、明朝は壇ノ浦PAで朝の休憩をお取り致します・・・」

全行程9時間ほどの短めの路線ながら、同社路線の「伝統」らしく2回の休憩は健在なようです。

52分、倉敷インターから高速に乗り、これまた流すように走り23時過ぎに最初の休憩地・道口PAに到着。

駐車場はさまざまの物流のトラックが休憩のために停まっていて混雑しており、こちらが停めれたのが「奇跡」に近い状態です。

以前、別の西鉄担当便の夜行路線に乗った時はこういった休憩時に乗務員さんが仕切りカーテンを下してくれたものですが、この「ペガサス号」はワンマン運行で実質「セルフサービス」になってる模様。僕含めひとケタな乗車人数なら必要性は薄く、結局誰も使っている様子はありませんでした。

15分、発車。

「まもなく消灯します」

乗務員さんからの案内があって、車内はほどなく真っ暗に・・・ところが、走り出してしばらくのところにある篠坂PAで慌ただしく停車。まだ起きていたので何事か?と思ったら、カーテンが薄く開いて乗務員さんが僕のところへ来て小声で、

「SOSボタンが点きましたが、何かありましたか?」

へっ?と思いつつ首を振ると乗務員がのぞき込むジェスチャーを見てはっと思い座席肘置きのSOSボタンをまさぐり、

「あ、動いた時にたぶん触れたんだと思います。すいません」

と赤面しながら陳謝。乗務員さんも異常じゃないのは判ってもらえたようで

「じゃあ出ますね」

と言って再び運転席へ・・・SOSボタンが肘置き下にあるのですが、個人的には際どい位置にあるので体のデカい僕は体位を変えるだけで触れる可能性がある訳で・・・いやはや「汗顔の至り」です。

再び動き出し、今度は触れないようにと右下のSOSボタンを意識しつつ寝返りを・・・よし、問題はなさそうです(笑)

* * * *

在鹿時代、神戸に実家があった頃は帰省を兼ねた高速バス乗りつぶしのルートに「ペガサス号」は組み込みやすく実際、最初に乗った時は西鉄バス担当便だったのを今でも覚えています。

その後は学生時代、社会人と下津井電鉄の担当便に乗っています(これを書いて気づきました。両備バス担当便に乗ってないですね・・・

その後、LCCやツアーバスとの競争にさらされ同社の高速路線がどんどん廃止される中で、この「ペガサス号」はよく生き残っていますが、それは上に書いたように設備のセルフ化やワンマン乗務になったりと「それなり」の変化に対応した結果であって、路線廃止の憂き目に遭うくらいならば、そういったサービス系の見直しにより路線としての「原点」に忠実になったことが、生き残った原因かもしれません。

同社のアナウンスでは「6/30をもって同社便のみ運休する」とだけありますが、これ以前から同社では乗務員不足により一般路線でも「減回ダイヤ」にするなど如実に「人手不足」が滲み出ており、今回の「ペガサス号」は乗車率が振るわないとか競争に負けたといった外的要因よりも、この「乗務員不足」に収斂しているものと思われます。

乗る客が居ても、それを運ぶ乗務員さんが居ない・・・この問題はバスヲタであっても背筋がうすら寒くなる「非常事態」であることを感じます。

今後は両備バスと下津井電鉄が毎晩往復することになりますが、全国的な傾向にある「人手不足」がこの体制維持すら困難にさせる可能性も残っている訳で、今後の動向に注目が集まりそうです。

* * * *

「SOSボタン騒動」はありましたが、寝れたのは寝れたようで2時過ぎに停まった気配で目が覚めたら山口県に入った玖珂PAで、乗務員さんの休憩に停まったようです。

そして次に停まった気配を感じたのは壇ノ浦PAですが時刻は4時10分頃、休憩かなと思いつつ再びうちらうつらしていたら、カーテンが開いて

「休憩です」

と案内されました。時計を見ると5時前・・・しっかりと「二度寝」してました(笑)

壇ノ浦での休憩というのは、西鉄路線に乗っていたら必ずといっていいほど経験することで、寝ぼけまなこで見る関門海峡を横目にトイレへ行ったり余裕があれば海峡の風景を眺めたりと、ちょっとした観光気分が味わえます。

うすら明るくなった関門海峡、そして生暖かい風・・・こういう体験も夜行バスならではで、ある意味「旅の醍醐味」と言えましょう。

車内に戻ってほどなくすると

「今日は西鉄天神バスターミナルと博多バスターミナルへのお客様だけで、北九州での降車がありません。降車地の変更がありませんが今変更なさる方はいらっしゃいませんか?」

昨日乗った「吉備エクスプレス」もそうでしたが、この便でもどうやらほぼ終点までの客ばかりのようで、とりあえずの「呼びかけ」のようでした。しばらく待って

「それでは砂津、小倉、黒崎引野口は通過しますが、降車ご希望の方は到着前までに乗務員までお知らせください」

とあって、5時5分発車。

関門橋で関門海峡を越え、福岡県入り。ほどなくたどり着いた門司インターで高速を降り、北九州都市高速へ。降車はないはずですが「路線バス」のためか、ルートは辿るようです。

大里、富野と近づくにつれ小倉の街並みが近づきその中をゆっくりと流すように走り、気が付くと八幡の工場街が遠くに・・・北九州地区最後の降車地になるはずの引野口は33分頃に通過。

39分、八幡インターから再び九州道へ。6時前だというのに結構な交通量で、福北間の流動の多さを実感します。

6時過ぎ、福岡インターから再び都市高速へ。同社の路線バスを眼下に見たりして、あっという間に眼下に福岡貨物ターミナル駅を見て箱崎の臨海部へ。このあたりで道口PA付近で消えた車内灯が点き、少し流れが悪くなったかな・・・と思ったら、天神北ランプで高速を出て渡辺通へ。

「長らくのご乗車、お疲れさまでした。まもなく天神、西鉄高速バスターミナルに到着致します・・・」

そして25分、西鉄天神高速BTに到着。1人が降りていきました。もっと降りる印象がありましたが・・・

終点、博多バスターミナルには6時43分に到着。北九州での降車が無かった分「巻き」(早着)で到着したようです。

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同社にとって「不本意な」撤退であろう「ペガサス号」の同社便運休ですが、同社のクオリティの高さは個人的に最初に乗った時から変わらない上質なものを感じましたので、願わくばそういった問題が解決され再び同社の「ペガサス号」に乗れることを切に望むところです。

【令和5年6月26日乗車】

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