JR西日本 ひかり590号

「のぞみ」が便利すぎて存在が霞んでいる「ひかり」ですが、それもそのはずで山陽新幹線の全区間を始発から終点まで走る便は朝の下り1本、夜の上り1本だけです。

今回はそんな山陽「ひかり」の中でも、かなり「変わった」列車に乗ってみました。

* * * *

前夜の下関市内は大雨に見舞われていましたが朝、駅前のホテルを出た時には湿気はズシッと感じつつも雨粒はなく、濡れることなく新下関駅に到着。

6時に自動改札が開いて、「ひかり590号」の表示を確認しコンコースへ。

「レールスター」表記が懐かしいな・・・と感じましたが、それもそのはずで700系7000番台は九州新幹線開通後(博多~新八代)にほとんどが「こだま」運用へ回ってしまい小倉始発の「ひかり590号」が唯一の定期「ひかり」運用になっているためです。

しかも最近のダイヤ改正で新下関始発に短縮され、国鉄時代では到底考えられなかった「新下関始発のひかり号」という、珍妙な事態に・・・

「ひかり590号」はすでにホームに横付けされていました。おそらく前夜に博多方面から回送されていたのでしょう。
700系ひかりレールスター編成で、

普通指定はおなじみ2列-2列のグリーン車かと見まがう重厚なシートで、これこそ「レールスター」の存在意義と言えます(自由席は3-2シート)

「こだま」運用時は閉鎖されているコンパートメントも、「ひかり号」なのでどうやら営業している模様・・・うーん、「こだま」でこの編成に乗る事が多いからここに乗ってみたいんだよなぁ・・・というのはヲタの戯言は横に置いといて(笑)

定時に新下関を発車。

8号車に乗りましたが、片手で少し足らないくらいの乗車数・・・「レールスター」の名に恥じない高加速を見せながら、

隣駅の厚狭を通過。

まあ「ひかり号」だし、「光速」は言い過ぎかもしれませんが軽やかに通過する様を見ていると胸が空く思いです。

そして26分、新山口着。

「のぞみ」も停まる山口県下の主要駅だし、まあ停まって当然ですよね。

で、「ひかり590号」はこの先徳山、新岩国、広島、東広島、三原、新尾道、福山、新倉敷と停まって終点岡山へ向かいます。

・・・え、停車駅が多すぎじゃないかって?ええ、これが所定ダイヤなのです。

つまり「ひかり」としての役目は先ほどの厚狭を通過しただけで、ここ新山口からは実質「こだま」として運行されるのが、「ひかり590号」の正体なのです(汗)

国鉄末期には東京~博多間の「ひかり」で京都から博多まで各駅停車、という系統がありましたが、山陽区間に「こだま」として別の列車を仕立てる余裕が無かった時代の「産物」であって、JRになってそれまでの「ひかり」を短縮の上、実質各駅停車にしたというのは山陽新幹線史上「初」の系統ではないでしょうか。
とまあ、色々と思索をめぐらしていると、ここで指定席から降車があって二重で驚き・・・おそらく「のぞみ」乗り継ぎかと思われます。
続いて停まった徳山では、スーツケース持ったビジネスマン数人団体で指定席へ・・・

新岩国に着いたと同時に階下の売店へダッシュ。時刻表上4分停車なのでダッシュし、あまり迷わずに買えば間に合うと踏んで敢行。

なんとか間に合いましたが、席に落ち着いてデジカメの絵を確認していると、このダッシュ直前に上り3番に新岩国始発の「こだま」がこちらの到着する直前に発車していった事を思い出しました。新岩国を数分遅れて出ると車掌さんから案内があって、

「・・・この先、広島駅の夜間保守工事が遅れており先行列車が遅延しております。この列車も広島駅手前で停車する場合があります。列車遅れまして・・・」

新幹線の保守は夜間に行うものが相場ですが、それがどうやら運行時間帯にまでズレ込んだようです。

案の定、東京起点825キロあたりで機外停車。
「まもなく広島ですが、広島駅保守点検の遅れからダイヤが乱れており、ただいま全てのホームが満線です・・・」

とのこと。
駅手前で再度、機外停車。

・・・なるほど、新岩国で追い抜いた「のぞみ」も入線出来ていませんね。
所定から30分近く遅れて、7時39分広島着。

「到着しましたが、当駅始発の『のぞみ78号』を先に発車させますため、大幅に遅れる見込みです。福山、岡山方面へお急ぎの方は・・・」

まあ実質「こだま」な「ひかり590号」の利用者に「急ぎ」の人はほぼ皆無だろうし、僕のような鉄ヲタくらいしか、この事態をわくわくしながら見物しているのは居ないでしょう(笑)
48分、発車。
あとはボーっと各駅の車窓を眺め・・・それでも広島までの閑散とした車内ではなく、窓側は常に埋まってる感じで乗車率は明らかに高めな状態・・・で、新尾道で「のぞみ」に立て続けに2本に抜かれたりするなど、遅延の影響が車窓にも表れていました。

8時49分、終点の岡山に到着。26分ほどに縮めていたのは流石です。

* * * *

山陽区間の「のぞみ」の充実もさることながら、九州新幹線の「さくら」の存在がそれまで「ひかりレールスター」が担ってきた守備範囲をかっさらっていった恰好になってしまい、「ひかり」の存在意義が「590号」のような珍妙なダイヤ構成にしか見い出せなくなってしまったのは、国鉄時代の「ひかり」を知るものにとっては忸怩たる思いが正直あります。

それでも、今なお名古屋始発ながら山陽区間を完走する「ひかり」も走っていますし、レポにも書いた最終の博多発新大阪行きの「ひかり」も生き残っていること、さらに岡山始発の東京系統の「ひかり」も実質「こだま」ながら名義としては山陽新幹線の種別の一角を担っていることから、まだまだ「ひかり」は「無くてはならない」列車であることは確かなようです。

【令和5年9月6日乗車】
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